27日の夜のつづき。2

2001年4月29日
ゆっくり、階段を上る音が聞こえて、彼がやってきた。

申し訳なさそうに、うちにあがる。

あたしは少し、ぶっきらぼうだった。
優しく、できなかった。
どうしても。

ベッドに座って、足を投げ出して、沈黙にならないよう
あゆのビデオをつけて、それを見ていた。
彼があたしの隣に座る。

あたしは距離をあける。

「ごめんなさい」
彼がベッドの上で、突然土下座した。

・・・ベッドの上で。
ふざけてんのか?って思った。

あたしは、突き放したようなことしか、言えなかった。

「ナンパのことは、もう、いいんだよ。それは、あたし
のなかで消化したことだから。
でもね、もっと,根本的なこと・・・
今まで何回も、別れてきたじゃん?でも、結局、
根本的なところは、変わらなかった。
自分が一番大切っていつも言ってたよね?
だから、仕方ないよね。
オレは、こうだからって、いつもそう言われると
あたし、なにも言えなかった・・
もう、人を信じられなくなるの、いやなの。
見捨てられるのも、裏切られるのも、もうやだ・・」


彼は、自分は弱い人間だと繰り返し言った。
訴えかけるように、あたしに言った。

いつも、こうあればいいなっていう、理想の言葉を口に
していた。
ほんとうは、違うんだ。
ひねくれたことしか、言えないんだ。
もっと、素直になれば、よかった・・・

そうあたしに、言った。

だけど。
冷たいようだけど、とても彼が小さく見えて。

いつも、よくわかんない自信をもって、
自分のいきたい道を突き進んで、
オレはこうだから、みうが無理だったら、いつでも
離れていいんだよ、って言われていた。

あたしはなぜか、そんな彼についていってしまっていた。
うさんくさいけど、嘘くさいけど、
それでも、あたしは。


でも、今、あたしの目の前で、小さく見える彼も、
確かに彼で。

本当の姿かもしれなくて。

彼のすべてをうけとめてあげたいと思っていたのに、
こんな姿を見せたときこそ、受け止めたいって、
思ったっていいのに。

あたしは何も感じないような顔をして、横にいる彼を
見ずに、ただビデオを眺めていた。

彼は、ナンパ日記のことをあたしが知っていたのが
かなりショックみたいだった。
ナンパについて、延々と話す。
ほんとうに延々と。

聞きたくなんてなかった。


「昨日、恐かったよね?これからはオレが毎日、来てあげるよ」
「あは・・いいよ・・」

それを、昨日、聞きたかった。
助けてほしかった。

もう二度と、自分は見捨てられる程度の人間なんだって、
思いたくない。

だから、ごめんね。

離れてしまおうね。

時計はもう、2時をすぎていた。
「明日、はやいんでしょ?」
「いや、明日は、普通・・・平気」

なにか言おうとするあたしの言葉を遮って、
彼は話しつづけた。

帰りたくないんだね。
でも。

こうしていても、あたしたち、どっちも、つらいよ?

だって、もう、戻れないんだよ?


「・・もう、3時、だよ?」
「うん・・今日、とまっちゃ、だめ?」

「え・・・?」
「だって、今帰ったら、もう二度と、みうに、会えない・・」

「・・・しょうが、ないなあ。もう・・・はは・・」

揺れたんだ。

二度と、会えない。

そうだよね?って。

ハンパな優しさは、酷だって、気づけばよかった。
それでもあたし、自分のさみしさに負けてしまったんだ。


いつもいっしょに寝ていたベッド。
いつも、くっついて、笑って、あったかくて、
ずっと幸せだと信じようって思いながら、
眠りについていた。

二人とも、よくお互いのうなされている声で目が覚めた。
子供みたいに、頭をなでて、大丈夫だよ、って
あなたが言ってくれた声に安心して
あたしたちまた、眠ることができたね。

あったかかった。

裏切られても、眠るときはなぜか、
信じようと思えた。


だけど、今。

隣にいるはずのあたしたちの間には、距離があって。
あったかいはずなのに、感じるのは自分の体温だけだった。

これが、ぎりぎりだったんだ。

これ以上近くにくと、あたしまた、

後悔してしまうよね?

一緒に眠りながら、こうして距離をとることに
残酷さを感じた。

ごめんね。

いっしょにいたい。

でも、これが、あたし、精一杯なんだ。

「捨てねこになっちゃった。また、拾ってくれないかな・・」

あたしは、なにも言えずに、寝たふりをしたんだ。



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