消えない夜。
2001年4月26日その日は、仕事のあとに、ダンスに行った。
30分遅れたけれど、ちゃんと来てえらいね、って
言われた。
嬉しかった。
帰り道に、彼から電話がかかってきた。
うちに来たそうだったけど、すごく疲れていたから、
遠まわしに断った。
うちの前で電話を切った。
鍵を開けて、うちに入ると、
おねえちゃんはもう寝ていてうちの中は真っ暗だった。
自分の部屋の電気をつけて、コートをかけて、
ベランダで一服するか、
ってベランダのカーテンを開けた。
そこに、人がいたんだ。
2階のうちのベランダに、知らない男の人が。
あたしの部屋からもれる電気に照らされて、
はっきりと顔が見えた。
ガラス越しの、至近距離で、目があったまま
お互い固まっていた。
その人は、我に帰ると、慌ててベランダから逃げた。
飛び降りるのに失敗したらしく、
派手な音をたてて、逃げていった。
足音が遠のいていく。
あたしはすっかり音が聞こえなくなるまで、動けなかった。
でも、しっかりしなきゃいけないと思って、
冷静になって、お姉ちゃんに事情を話して、
警察に電話をした。
おねえちゃんは、「眠いから寝かせて」とねぼけて言って、
また眠ってしまった。
たくさんの警察官のひとが来た。
あたしはそれなりに落ち着いていた。
頼れるのは、自分しかいなかったから。
警察官のひとが帰っていって、
またうちはしんと静かになった。
とりあえず、彼に電話をした。
きっと、駆けつけてくれると思ったんだ。
オレがついてるよ、って言ってくれる、って。
家の電話は話中で、携帯電話はやっとで出た。
一部始終を話す。
「あはっ・・・そっか。」
耳を疑った。
なんだこいつ、って。
「今日は不思議なことがたくさんおこるなあ」
あたしはとたんに無口になった。
彼が話し出す。
「さっき電話してた友達も、このあいだ泥棒が入ったんだって。
それで、帰るのがこわいって言ってたんだよ。」
それって、女じゃないの。
「午前中にも、不思議なことがあってさあ」
「それでさっき、セブンで『絶体絶命から逃れる方法』
ってのを一冊読んできたんだー」
それから彼は、海でサメに襲われたとき、どうすればいいか、
走ってる車から飛び降りるには、
を延々と話し始めた。
あたしが無事かどうかなんて一切聞かない。
その程度なんだよ、やっぱり。
まただ。
また。
「だからさあ、こういう知識とかが、いざというとき
必要なんだよね。いざってときに何ができるかって
いうのが大事なんだよ」
このあいだ、いざってときにあたしを警察の身代わりにして
逃げたのは誰だ?
「ねえ、さっきのはなし、びっくりした?」
「えー別に。そういうこともあるよねって感じ。」
・・・殴っていいですか?
そうしてまた、サメとか熊のはなしをする。
「心配した?」
無視。
「心配した?」
なにも、しゃべらなくなった。
ちょっと焦る。
「あたしは、別に平気だからさ、明日はやいのに、
ごめんね?」
なんで、気ぃ使ってるんだ、あたし?
「・・・気のきいたこと言えなくてごめんね」
・・・・・は?
そういうことじゃ、ないでしょう?
あたしのこと心配じゃないから、そういう台詞が
社交辞令でしか言えないんでしょう?
「じゃーね」
電話を切って、思った。
終わりです。
まさにゲームオーバーってかんじ。
ロードもリセットもなし。
今までのあたしは、なんだったんでしょうか。
それでも信じていたあたしはなんなんでしょう。
彼はあたしを助けてはくれないなんて、
あの日に痛いくらいわかったはずなのに。
30分遅れたけれど、ちゃんと来てえらいね、って
言われた。
嬉しかった。
帰り道に、彼から電話がかかってきた。
うちに来たそうだったけど、すごく疲れていたから、
遠まわしに断った。
うちの前で電話を切った。
鍵を開けて、うちに入ると、
おねえちゃんはもう寝ていてうちの中は真っ暗だった。
自分の部屋の電気をつけて、コートをかけて、
ベランダで一服するか、
ってベランダのカーテンを開けた。
そこに、人がいたんだ。
2階のうちのベランダに、知らない男の人が。
あたしの部屋からもれる電気に照らされて、
はっきりと顔が見えた。
ガラス越しの、至近距離で、目があったまま
お互い固まっていた。
その人は、我に帰ると、慌ててベランダから逃げた。
飛び降りるのに失敗したらしく、
派手な音をたてて、逃げていった。
足音が遠のいていく。
あたしはすっかり音が聞こえなくなるまで、動けなかった。
でも、しっかりしなきゃいけないと思って、
冷静になって、お姉ちゃんに事情を話して、
警察に電話をした。
おねえちゃんは、「眠いから寝かせて」とねぼけて言って、
また眠ってしまった。
たくさんの警察官のひとが来た。
あたしはそれなりに落ち着いていた。
頼れるのは、自分しかいなかったから。
警察官のひとが帰っていって、
またうちはしんと静かになった。
とりあえず、彼に電話をした。
きっと、駆けつけてくれると思ったんだ。
オレがついてるよ、って言ってくれる、って。
家の電話は話中で、携帯電話はやっとで出た。
一部始終を話す。
「あはっ・・・そっか。」
耳を疑った。
なんだこいつ、って。
「今日は不思議なことがたくさんおこるなあ」
あたしはとたんに無口になった。
彼が話し出す。
「さっき電話してた友達も、このあいだ泥棒が入ったんだって。
それで、帰るのがこわいって言ってたんだよ。」
それって、女じゃないの。
「午前中にも、不思議なことがあってさあ」
「それでさっき、セブンで『絶体絶命から逃れる方法』
ってのを一冊読んできたんだー」
それから彼は、海でサメに襲われたとき、どうすればいいか、
走ってる車から飛び降りるには、
を延々と話し始めた。
あたしが無事かどうかなんて一切聞かない。
その程度なんだよ、やっぱり。
まただ。
また。
「だからさあ、こういう知識とかが、いざというとき
必要なんだよね。いざってときに何ができるかって
いうのが大事なんだよ」
このあいだ、いざってときにあたしを警察の身代わりにして
逃げたのは誰だ?
「ねえ、さっきのはなし、びっくりした?」
「えー別に。そういうこともあるよねって感じ。」
・・・殴っていいですか?
そうしてまた、サメとか熊のはなしをする。
「心配した?」
無視。
「心配した?」
なにも、しゃべらなくなった。
ちょっと焦る。
「あたしは、別に平気だからさ、明日はやいのに、
ごめんね?」
なんで、気ぃ使ってるんだ、あたし?
「・・・気のきいたこと言えなくてごめんね」
・・・・・は?
そういうことじゃ、ないでしょう?
あたしのこと心配じゃないから、そういう台詞が
社交辞令でしか言えないんでしょう?
「じゃーね」
電話を切って、思った。
終わりです。
まさにゲームオーバーってかんじ。
ロードもリセットもなし。
今までのあたしは、なんだったんでしょうか。
それでも信じていたあたしはなんなんでしょう。
彼はあたしを助けてはくれないなんて、
あの日に痛いくらいわかったはずなのに。
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