それから。

メールには、250文字全て使って、書いた。
ほんとに、なんでこんな優しい文章書いてんだろ？
って思った。
馬鹿みたい。

＜あたしは、前も言ったじゃん。あたしがかわりに
ひかれてあげるって。だから、いいんだよ。
でもね、それはお互いそういう気持ちじゃないと。
あたしは強いけど、とても弱いんだよ？＞
途中の文章だけど、こう書いた。

あたしはよく、なにかあったら、あたしが守ってあげる
って言ってた。
車にひかれそうになったら、あたしがひかれてあげるし、
地震がきたら、あたしがかばってあげる、って。
たしかにそれは本当の気持ちだけど、それは、
彼はいざとなればあたしを一番に助けてくれるって
そういう確信があったから。

今までなにかあっても、きっと、いざとなれば、
あたしを、助けてくれるよね？
あたしのこと、捨てたりしないよね？
って、思えたから。

12時すぎに、彼から電話があった。
話があるから、今から来るって。
彼は、逃げると思った。
きっと、あたしから逃げて、別れ話をするんだって、
わかった。
だったら、好きにすればいい。
いつまでも、口ばっかりで、逃げる人生送ればいいじゃない。

うちに来た彼は、確かに疲れていた。
あたしは、馬鹿みたいに、明るかった。
いつも通りの態度にしていたかったんだ。

しばらくして、彼がぽつんと言った。
「・・・ごめんね？」
膝を抱えて、うつむいていた。

でも、もうそれが前みたいに可愛いなんて思えなかった。
ぽつりぽつり、と話し始めた。

あたしのメール読んで、思った。
あたしの期待にはこたえられない。
あたしには、もっといい奴がいる。

自分は本当にサイアクな奴なんだ。

だって、あの日、あたしを置いていったとき、
悪いのは自分だから、自分さえ逃げれば、あたしは
大丈夫だと思った。
自分が逃げる役、あたしが、ごまかす役、って。

だから、あたしが電話をかけてきたとき、怒っていた。
何で電話してくんだよ？ばれるだろ？って。

ほんと、こーゆー奴なんだ。
自分しか大事にできないんだ。
あたしに対しても、その程度なんだ。

あたしが故意に電話やメールを無視してるって
気づいたとき、もう仕事が手につかなくなった。
一日中、ずっと携帯みていた。
仕事、中途半端になってしまう。

あたしに、依存しすぎてしまう。
つらい。

だから、

別れよう。

・・・・だって。いつまでたっても、逃げてるんだね。
言い訳ばっかり。
つらいのなんて、当たり前じゃない。
あたしに、それだけのことをしたんだから。

いつも、言ってなかったっけ？
『もうオレは自立してるし、大人だから、自分の好きに
してるけど、その代わり責任はとっている。』
って。
ほんと、口ばっかりだね。

そう思ってもあたし、
「わかってたよ。」
って、優しく言うだけだった。
あたしも、嘘つきだから、やっぱり、最後までぐちゃぐちゃ
したくなかった。
いがみあって、お別れしたくなかった。

驚くほどあたし、平気だった。
そう思った。
でも、体は正直だった。震え、とまんない。
彼が話している間、ずっと、震えてどうしようもなかった。

でも、彼が、
「ほんとに、今までありがとう。
色々あったけど、楽しかったよ。」
って言ったとき、

今までのこと全部、溢れてきて、あたし、泣いてしまった。
さみしいのもあったし、あの時の信じきってた自分も、
すごくくやしかった。

でも彼に、抱きついて、泣いてしまった。

今あることが、過去になるのって、どうして、
こんなに恐いんだろう？
なにもかもなくなってしまいそうでどうして、こんなに
恐いんだろう？

あたしはここにいるし、時間もただ流れていくのに。

「明日仕事だし、帰る」って彼は言ったけど、
あたしがあまりにも泣くもんだし、震え続けているから、
「寒い？」って言って、寝かせてくれた。
でもあたしがおとなしく寝てないから、

「ちょっとだけだぞ」
って、添い寝してくれた。

なんでだろう？
ほんと、なんで？

あたし、しがみついて泣いてた。
好きなの？
好きじゃないよね？
失望したよね？がっかり、したよね？

なのになんで、あたしは今、こんなにしがみついて
離れられないんだろう？

そしてそのまま、
彼が先に眠ってしまった。

「みうは、いいコだから・・」
寝言でそんなことを言いながら。

悲しくなった。

そのまま、お互いしがみついて、眠った。

来て欲しくない朝が、やってきた。

彼は、なにも言わずに帰っていった。

あたしはそのまま熱をだして、そのまま土日の休みが
終わった。

平気だった。
恐ろしく、平気で。

でも、体は正直だった。